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山桜とダッチスピーカー

仕事場のデスクから山が見える。方向音痴だということと地形が複雑だということで良くわからないのだが、恐らく北。座しているスペースは一面がガラス張り。景色の大部分は隣接する建造物に切り取られているものの、向かって右うえあたりに切れ端のような山の端っこが見てとれる。高さにして数十メートルだろうか。山というよりは丘。地域の人々が共同で所有し管理している、鎮守様がある里山やら裏山やらといった風情。その景色がの一部がやや桃色だっている。

つまり桜が咲いている。とはいえ、特に灌漑水利用の小川やら城跡やらに植えられた圧倒的な桜並木やらというのに比べると寂しい。緑を基調としながら、その緑も濃かったり黄色めくほど薄かったり。そんな細々とした彩りのなかに溶け込んでいる桜色。グラディエーションのなかに溶け込んでおり、桜の持つ周りを飲み込むような絶対的な存在感というのがない。が考えてみるとこれが本来の姿。なぜか水路脇やらに並べて植えられて、それが昔から伝わる日本の象徴的な風景だという。だいたい生き死にの狭間での枕にしなければならないお城に桜なんか植えないだろ。

とはいえ、演出された桜というのも見応えがある。薬師寺久遠寺のような仏閣の境内にあり、ロケーションとの調和を考慮し尽くし、手入れがいきとどいた桜やら、全国に数多ある千年やらそこにあるという桜。診られることを意識した女性の立ち居振る舞いの美しさのように、雅で優雅だったりする。桜は華やか、イメージがあるが、占有している領域的に圧倒的な色彩感やら、色目の鮮やかさからいって、紅葉の方が迫力はある。個人的には桜の美しさというのは、その最たる(散ってしまう)儚さに通じる、プルな魅力。よい表現が浮かばないがおしとやかとか奥ゆかしいとかなのだろうか。

にすれば、この場末の仕事場から見える景色というのは、まあそこそこということになる。そういえば秋にはそれなりに紅葉する。額にフレーミングしたいような、というほどではないが、イヤミなく季節感を感じさせるには十分。夏には新緑。匂い立つというほどではないが、登る角度を鋭くし始めた日差しを若葉跳ね返している。作り込まれすぎていず説明的すぎない景色。ヒトの思惟に塗れた職場という場所から愛でるには悪くない。tubeで落とした「仕事が捗る...」系のコンテンツをBang & Olufsen Japanで10年ローン組んで買ったスピーカーで小音量で流しているような、贅沢感がある。