松浦寿輝『名誉と恍惚』読了

松浦寿輝『名誉と恍惚』読了。

いい意味で、人が生きることへのしぶとい力を感じた。心情や夢うつつのことも多く出てくるが、単に観念を弄ぶだけの作品ではない。

朝鮮人と日本人の合いの子であることで揺らぎ傷つけられる主人公の魂は、最後の最後に日本人としての誇りを提示してくれた。引用。

?みんな死んでしまったしグーシャン(故郷)もないが、おれはまだまだ生きてやる。九十まででも百まででも生き延びてやる。むろん最後まで、決して内地には帰らない。山が青くもない外地に生き、水が清くもない外地に死ぬ。おれが果たすべき志も、おれの自由も愛も名誉も恍惚も、すべてそこにある、おれは、そういう日本人だ。?

戦争や血や暴力、殺人もあちこちに散りばめられているが、後味のいい終わり方に安心させられる。

松浦さんの話は、ダウナー寄りで終わる印象が強かった。だから、この話の力強さには感動すら覚えましたよ。最近の私は観念を観念で終わらせるだけの話に飽きているので。出会うべくして出会えた作品だと感じた。